「リエンゲージメント広告」の効果を最大化するには? ゲーム、EC、その他、アプリ別に考える

CyberZ(サイバーゼット)の侯 明昊(コウ・ミンハオ)です。

前回「『リエンゲージメント広告』の効果を最大限に高めるための3つのポイント」では、 

  • 各アクション地点に計測可能な環境を用意しておくこと
  • 休眠後どれだけ経過しているユーザーを狙うのかという時間軸を考える
  • どこまでアクションしたユーザーを狙うのかというアクション軸を考える

以上の3つが重要であると述べました。それらを踏まえた上で、今回はリエンゲージメント広告の配信設計について紹介します。


課題によって打つべき施策は異なる

まずはリエンゲージメント広告の配信セグメントを決めますが、自社アプリの課題が何であるかによって、売り上げを最大化させるポイントは異なります。

例えば、ユーザー単価を上げることが課題のアプリには、深い階層まで到達しているユーザーに向けて購入を訴求するような広告配信をすることが理想です。また、CVR(購入への転換率)を改善させたい場合であれば、未購入でアクティブなユーザー層に重きを置いて、いかに初回の購入をしたくなるかを訴求する広告配信が有効です。


施策例: ゲームアプリの場合

ゲームアプリを例に取って具体的に見ていきましょう。

時間軸については該当タイトルで離脱後の再訪率が急激に低下する地点を基に設定します。下の画像のように例えば休眠経過2日以内、3~7日、8~14日、15日以上といった具合に、ユーザーの階層を3段階に分けます。

休眠ユーザーを呼び戻すための訴求内容はそれぞれのセグメントによって変わってきます。ターゲットと訴求内容のマッチングで広告効果は大幅に変動し、CTR(広告のクリック率)で1.5~2倍ほど効果の差が出たという事例もあります。

休眠期間が比較的短いユーザーの場合は、サービスに対する興味関心度合いがまだ高い可能性があるので、「時限性」のある内容を訴求して呼び戻します。期間限定のコラボガチャイベントやインセンティブ配布キャンペーンなどがこれに当たります。

休眠日数が長いユーザーに対しては、ゲームの中身が従来と比べてアップデートされているといった「新機能追加」や「新クエスト・新キャラの追加情報」を訴求することが有効でしょう。あるいはテレビCMなどの大型プロモーションやゲーム内の大改修、アクティブユーザーの反響が非常によかったイベントを実施した場合、それ以前に離脱してしまったユーザーに対してその旨を訴求することも効果的です。


施策例: EC系サービスの場合

続いてEC系のサービスで考え得る訴求の仕方を見ていきましょう。プロダクトにもよりますが、アクション軸は大まかに下の5段階に分けられます。

ECの場合に有効になるのが、ユーザーアクションに連動して訴求を出し分けする広告手法です。「ダイナミックリターゲティング」と呼ばれ、商品閲覧や商品購入といった行動履歴に基づいて表示する広告を変えるやり方です。

例えばファッション系アプリでは、ジャケットを購入したユーザーに対して、購入商品とセットで使えるシャツや同じブランドのおすすめ商品の広告を出します(レコメンド)。旅行予約アプリなら、草津の温泉旅館を検索したユーザーに対して同じ地域や近隣エリアの宿泊施設の広告を表示します(リターゲティング)。こうすることで、ユーザーの興味関心により近い内容を訴求し、購入などのコンバージョン率を上げることができるのです。

この手法を取る場合は、広告配信時に表示するクリエイティブ情報(商品画像)の取得先である商品リストのデータフィード(商品情報)を構築する必要があります。より効果を高めるために、あらかじめコンバージョン率の高い商品群に絞ることも有効です。例えば価格帯で絞ったり、レビューの点数で該当商品を選定したりするのです。

商品ジャンルが多岐にわたるようなサービスであれば人気のカテゴリに、店舗予約・不動産・求人といったサービスであれば都道府県・地域ごとにターゲティングできるような情報をデータフィードに持たせるとよいでしょう。


ダイナミックリターゲティングはECや旅行、不動産、求人といったジャンルのアプリと特に親和性が高いといえます。Webでは既に同じ手法が使用されておりますが、アプリでもここ半年ほどで、徐々に導入が進んでいます。効果はかなりよく、目標KPIを達成しているケースが多いようです。


新規需要が一巡したフェーズならではの対策を

最後になりますが、弊社が実施した市場調査によるとゲームアプリやEコマースサービス運営者の広告主を中心に、リエンゲージメントを目的とする広告出稿需要が顕在化しつつあり、2016年の出稿額は69億円、2020年には350億円に到達すると予測されています。

ゲームアプリやEコマースサービス運営者などの広告主は、これまで新規ユーザーの獲得を目的にスマートフォン広告を活用してきました。しかし、そうした需要は一巡し、現在は既存ユーザーといかに関係性を深め、収益を高めていくかということへの関心が高まりつつあります。本連載でお伝えしたことはそのための1つのヒントにすぎませんが、ご参考にしていただき、プロモーション活動に生かしていただければ幸いです。


最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。


この記事はIT Mediaに掲載した記事を一部流用して掲載しています。
よろしければそちらもご覧いただければと思います。

http://marketing.itmedia.co.jp/mm/articles/1605/19/news015.html

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